以前から中国の現代美術がおもしろいという話は聞いていて、
牧陽一
『アヴァン・チャイナ―中国の現代アート』 (木魂社 1998年)や
『北京芸術村――抵抗と自由の日々』(麻生晴一郎 社会評論社)。あるいは雑誌
「エスクワイァ」の都築響一のレポート(94年1月号)などで知ることができた。
また日本でも展覧会が開かれて画家たちが紹介はされているが、いまだ全面的にしられているとは言いがたい。
そのアートが売れているという。
テレビ東京の番組が放送されたので見てみた。
日経スペシャル
「ガイアの夜明け」 1月4日放送 第142回
『燃える中国アート争奪戦 ~"日本・欧米・中国"世界が狙うお宝~』がそれだ。
この番組は役所広司がホストとなり、経済のホットな動向を取材するものだが、成功物語の「プロジェクトX」と違って、今おこなわれているものを採り上げている分、今後の動向は未定なわけで危うさや不安定なものも垣間見えるだけに面白い。
今、「急速に発展する中国において、今、爆発的な勢いで、一部の『中国モダンアート』の価格が跳ね上がっている。
「中国モダンアート」とは89年の天安門事件以降に若い中国の芸術家たちが斬新な感覚で創り出した絵画などの美術品のこと。例えば、10年前に5000ドルだった作品が、現在30倍となる15万ドル(日本円で1500万円以上)の値段をつけるなど、数年で10倍や20倍の価格になるものは珍しくないと言う。
それは、ヨーロッパやアメリカのコレクターたちが、収集目的に、もしくは投資対象として買い求めているからである。もはや、中国のモダンアートは中国株よりも「確かな投資」とさえ言う人もいる。
一方、経済力をつけた中国のニューリッチたちも、自国の芸術を守るため、絵画など美術品の買い戻しに走っている」という。
ここで紹介されたのは、主に具象的表現でポップアートの中国意匠の折衷のようにも見える。確かに面白いのだが、一種のエキゾチシズムで売っているようにも見える。
文化大革命や政治プロパガンダの引用で成り立っているものが多いようだが、それが同義反復しているようにも見える。おそらく同じような作品を生み出さないと売れないと思って製作しているのではないだろうか。
西欧のオークションなどでも中国アートの値段が高騰しているとのことだ。
一度あがれば、投機目的に買う傾向になるだろうし、それが、この中国のアート熱を押し上げているのだろう。
中国モダンアートは中国の経済や政治の歴史のジグザグを感じさせて、興味深いが、中国人本来の商人的な野心が表にでてきたときに衰退していくのではないか。
番組を見終わって、そう考えた。
一年ほど前、上海に旅行したが、上海駅の前で売り子をしていた若い女性はまったく化粧気がなく商売気もなかった。確かに発展はしているが貧富の差が拡大している印象を受けた。経済発展もいいけどインフラや普通の人びとの生活向上など優先課題はたくさんあるだろう。
アートで巨大な金が動くのであれば、それに目が向くのは当然だろうが、一般の中国人が、それに親しんでいるわけでもない。投機ではなく一般レベルでの美術はどうなんだろうか。もちろんどこの国でもそうだろうが、中国の場合は一気に凝縮されてしまった気がする。