東京都現代美術館で中村宏の展覧会がひらかれているのでいってみた。
「中村宏・図画事件1953-2007」展
あらためて思ったが、中村宏の絵は劇画のようだということ。
初期のルポルタージュ絵画は文字どおり現実の事件やことがらを対象・取材して作品化してもので、そこに便器や蒸気機関車などの私的なイメージが挿入されていたりする。また、色数も極端に少なく、黒のりんかく線が強調されて彩度のない、水墨画にも通じる世界でもある(内容は幽玄・静寂の世界ではなく、騒乱・波乱の予感を感じさせるものであるが)。絵のタッチや雰囲気が山上たつひこの作品「旅立てひらりん」や「新喜劇思想体系」「光る風」の一シーンににているのである。
また、のちにトロツキー全集のポスターや、月刊誌「現代詩手帳」の表紙、現代思潮社の書籍のイラストレーションなどの印刷媒体の仕事にもその感じはあらわれている。黒タイツの一つ目の女子高生や銀河鉄道のような宙を舞う蒸気機関車のアイコンが執拗に反復されているのだ。
最近の作品はリアリズムへ回帰したような感じもするが、作品のなかで黄色と黒のななめのストライプをみるとやはり中村氏は
てっちゃん(鉄道オタク)なのだなと思う。