昨年の暮れに中国・江南地帯を旅行してきた。
とくに古い町並みを訪れたわけではないが、まちの建物に「うだつ」がよく見かけられた。おもしろいのは古い建物だけはなく、近年建てられたとおぼしき建物にも「うだつ」がついていることだ。
そういえば日本で帝冠洋式として知られた、いわゆる洋式の建物に伝統的な瓦屋根を乗せた建築様式のことだが、中国風に折衷した「中華スタイル」も存在はした。
日本では先の大戦前と戦時中、満州国建設時にも採用されたが、その後はアナクロニズムとして退けられて、敗戦後の経過もありかえりみられることはなかったし、新しい建物もほとんどつくられなかった。
しかし中国では、いわゆる帝冠:中華スタイルでのビルがつくられていて、「うだつ」などもつけあれて景観の統一が図られている。
「うだつ」とは屋根のうえに隣の家との境部分につける障壁のことで、「うだつがあがらない」などの語源になったもので、「うだつ」を屋根にあげることで一人前だといわれていた。かつては、江戸中期から商家の町屋の建物などに多くつけらてていたといわれる。
http://sikoku-udatu.hp.infoseek.co.jp/udatu.htm
うだつのまち脇町
うだつ
ところで、うだつの発生だが、中国で発祥してからの伝来かと考えられる。たとえばベトナムのホイアンは貿易で栄えた街で、世界遺産ともなったが、今でもうだつのある町屋形式の街並みがある。もともと中国文化の影響がつよい地域なのでとくに不思議はないが、日本のばあいは判然としない。うだつは中国語では「火風壇」(フォンフーチャン)というようなので、文字通りだ。用途をあらわしている。
司馬遼太郎も中国から伝来したものであろうと、エッセイなどで(『街道をゆく―中国・江南のみち』)その説を展開しているが、具体的な資料なりをしめしたり、実証的にあきらかにしているわけではない。
この方面の研究書もいくつかあるようだが、諸説あるようで決着がついているわけではない。だからどうなんだ、ということもあるだろうが、誰かきちんと実証研究をお願いしたいものだ。