今開催されている洞爺湖のG8サミットに対して、ものすごい厳戒体制が敷かれている。
東京都内でも始まる数日前から、地下鉄構内に警官が目をひからせている。ここまでしないといけないのか、このようなエネルギーを傾注する必要があるのか疑問だが、「テロ対策」の言葉の前には、いっさいが不問に付されてしまうようだ。
まさに「テロ」を利用した国家の総動員テロなのだが…。
実現しなかったネグり来日とG8サミットに絡んで、というわけではないが、「帝国」や「グローバリゼーション」「資本主義」といったキーワードで本を拾い読みしている。
精読する、といいたいところだが、読み通すのに難儀なものもあり、すべて通読する義理もないので適当に読んでいる。
伊藤誠の『
幻滅の資本主義』(大月書店)現在の資本主義国家と社会のありかたの問題点をわかりやすく、つぼを押さえたもので、読みやすい平易な文章で、すごいことを提起していたりする。「
同一価値労働同一賃金」の提唱についても、単純に提起するとむしろ差別賃金を肯定することになり、ていねいな説明が必要との問いかけをしている。
労働には同一の価値形成のありかたが備わっているわけで、その価値形成の過程の解明や確定が需要だとしている。
ほかにもジェンダーと労働の問題や価値論論争の話など、多彩で内容の濃い本でさすが宇野経済学の俊才といわれた面目躍如という気がする。
本山義彦編の
『「帝国」と破綻国家』(ナカニシヤ出版 2005年)は副題に<アメリカの「自由」とグローバル化の闇>とあるように、具体的にアメリカ帝国主義とグローバリゼーションが推し進めた結果としての軍事紛争や破綻国家という事実を丹念に検証している。
的場昭弘の
『マルクスを再読する―<帝国>とどう闘うか』(五月書房 2004年)については広義のマルクス主義を再検討するというもので、そのための媒介としてハート・ネグりの「帝国」概念を援用している。そして、それに関係するものとしてスピノザを評価して、それを軸にしている。またアルチュセールについての評価も一定肯定している。
ここではマルクスの再構成をおこなっているが、このあいだ読んだ高橋洋児の『マルクスを活用する』(彩流社 2008年)と対立する論点もあるので議論すると面白いと思う。
的場氏はややネグりの思考に引きずられているような気もするが、原理的な議論は重要だろう。
『帝国論』山下範久編(講談社 2006年)具体的な国内部での帝国(現代的な意味での)のあり方を考察したものと、歴史概念としての帝国主義と帝国形成のシステムを検討したものなどあり、抽象的なものと具体的なものとの距離感がわかりにくい、というかなじめなかった。
『グローバリズムの「失敗」に学ぶ15の原則』M.ゾレス他(アスペクト 2005年)はグローバリゼーションによる市場開放の成果を素朴に感じている人々への警告の書かもしれない。というのはアメリカの経済学者が政治や政策に関与することによって混乱が増すこと(直接でなないにせよ)を指摘し、具体的に地域や国ごとに危機にありようを解説している。経済学者の竹中平蔵が大臣になって規制緩和をすすめたことが、勝ち組・負け組みの格差社会を加速化した、と感じている今の日本ではよく理解できるのではないだろうか。
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