ジョセフ・E・スティグリッツの『世界を不幸にしたグローバリズムの正体』(徳間書店 2002年) と『世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す』(徳間書店 2006年) を読む。
スティグリッツはクリントン時代のアメリカの経済政策のブレーンだったこともあるし、世界銀行の副総裁でノーベル経済学も受賞している。
その彼がグローバリズムの弊害について記した本がこれだ。
世界経済の指導部中枢にいた人間の言葉だけに重みがあるが、頭のよい学者というだけではない。たんなる卓上の経済学者ではないのだ。世界銀行の首脳というと、なんとなくマンハッタンの高層階で空調のきいた部屋で椅子にすわっているという姿を連想するが、そうではないようだ。世界の貧困の現場に立ち会っているし、フィリピンではゲリラとも対話をしたこともあるという。
じっさい彼の発言はリアリティもあるし、説得力がある。いろんな事例が掲載されており参考にもなるが、ものたりなさもおぼえてしまう。良心的エコノミストの限界がみえるといったら、言いすぎだろうか。
これらの本でたとえば、日本の小泉流の新自由主義についての批判はあるが、厳密な意味での新自由主義批判はない。それだけ具体的でイデオロギーや観念的概念からは自由であるということで、それはプラスなのだが、これらの本を読んでも、なぜそうなるのか?の説明はない。
ただ、IMFやWTOが不公正でアメリカの影響が強いという批判はあるのだが、新自由主義を採用することの真実はなんなのか、そこが知りたいところなのだが、それについては答えてくれない。それらの背後にある思惑や分析はされていない。その意味で不満が残った。