佐伯啓思がサンケイ新聞で警鐘を鳴らしている。
【正論】京都大学教授・佐伯啓思 「マルクスの亡霊」を眠らせるには
昨今の格差社会の現象を受けて「蟹工船ブーム」やマルクス本の復権や、若者の左傾化が起きているというのである。
そのあたりはにわかに信じがたいが、なにぶんサンケイゆえに過剰に左の伸張をおそれて、悪い芽は早めにつみとるべし、という老婆心がはたらいているのだとおもう。
佐伯がいっているのは資本主義グローバリゼーションが世界的に蔓延するなかで、時代がかわり資本と労働の対立が激化するようになり、経済外的な規制が必要だというものである。
佐伯はマルクスを否定しつつも、「今日は、確かに、マルクスが述べたような一種の搾取経済の様相を呈している」と語る。
佐伯自身は<資本主義=資本制生産システム>を理解しているわけではないので、今日の「無政府的資本制社会」のありかたの根本原因がわからない。
だから、経済外的規制といいだすのだ(経済的なものもあるし、必要だ)。
そのこと自体はむしろ左翼政党である共産党や社民党がいってることだし当然のはなしだ。
佐伯がイデオロギー的偏向により、マルクスの亡霊を眠らせようと願望するが「確かにマルクスが予見したように、きわめて不安定なものである」「規制や政府によるコントロールが不可欠となる」(これは社会主義とフツーはいう。もちろんナチスなどの統制経済や国家資本主義的な政策もあるが)と語っているように彼の主張はマルクスを認めてしまうのである。