G8サミットのメディアセンターについての報告の集まりがあり出席した。
まず昨年ドイツのハイリゲンダムG8サミットの記録映画『フェンス』をみる。映画は風光明媚とまではいかないが、自然が豊富なハイリゲンダムの街を映しだす。後できくと旧東ドイツの保養地だったところだそうだ。
そこからG8サミットの防衛のためのフェンスを設置する作業がはじまっていく。サミット開催の準備をたんたんと描写していくいっぽうで、地域の人々のインタビューなども交えていく。
さてサミットだが、ブッシュ大統領夫妻が到着した様子をお茶の間のテレビが放映している。それを地元のアパートの住人が見ながら、実はすぐ脇の空き地が大領領など世界各国の要人のヘリコプターの到着場所だということを紹介する。
サミットに反対する人たちの街頭デモのシーン。そして静かな牧草地をデモ参加者が進んでいく。このシーンは美しい、おとなの腰くらいまでの高さの生えた、あたり一面の草。そこを人々がシルエットとして映えている。まるで古代史劇で剣闘士たちが移動しているようだ。
デモの様子を取材するかたわら、警察の放水車の装置についてのインタビューなどカメラはあくまで客観的で冷静に多面的に事態をとらえようとする。
G8を説明するナレーションはいっさいないが、不当拘留された学生や人権侵害を訴える弁護士、警備について成果を語る担当者の話などが問題を提起する。
最後に反対派の人々がごみを整理している、その脇を警備の警官たち数人がとおりすぎる。フェンスが解体されて終わる。
たった二日間のできごとでさまざまなことがおきた。動員された警官は14800人。開催地のホテルから41キロ圏内での集会の禁止。地域の人々への管理・監視体制、さらに反対する人々への予防拘禁など。
日本のサミットではもっと警官が動員されたようだが、ともかくものすごい厳戒態勢であった。それについては映画終了後に映像資料として報告された札幌の地元のテレビ局の放送が示唆的だった。
ドイツからネット放送局の記者が取材にきていて、北大に設置されたG8メディアネットワークなどによってニュースを配信している様子なのだが、その記者は軍事政権下のアルゼンチンを体験した出身者で、札幌での反G8デモの取り締まりのありかたが、抑圧的で異常なものと感じてアルゼンチンでの体験を思い出したというのだ。
日本の異常な状況をこのニュースくらいでしか放映されていないのも、この国の人権状況なのかもしれない。