柄谷行人の新著である『
世界史の構造』(岩波書店 2010年)を読んだ。著者のこれまでの主張の集大成のようなところがある。交換原理を人類の社会と歴史の基礎としてみる視点はユニークだが、論証がうまくいっているかは疑問。やはり近代に絞って考えたほうがいいだろう。その意味で前半は飛ばして読んでもいい。最大の難点は変革主体形成が可能なのか?というところ。著者によればこれまでのルカーチなどの階級意識を追及して党を組織するスタイルは、資本=国家=民族(国民)の枠組みから抜け出ることができない、という。それはナショナリズムや国家を強化することにしかならない、と語るが、かといって消費者としての労働者が何によって組織されるのかいまいち判然としない(啓蒙的な世界市民なのか?)。カントの理念的意識化だけでは人は結集できないのではないか。そのあたり階級の問題として掘り下げられる必要を感じた。