たまたまブックオフで『超ジャズ入門』(集英社新書 2001年)で見かけたので、つい買ってしまったが中身のうすい本だった。文章はダラダラとどうでもいいことを書きつらねている。ジャズという音楽の閉鎖性や保守性なども論難しているのだが、そもそもこの著者は今はなくなったが「スイングジャーナル」という老舗のジャズ雑誌の編集長で、その雑誌じたいが、そういった風潮を批判するどころか、安易に寄りかかり助長すらしていたんではないか。何をいまさらカマトトぶっておるのかな。
レコードガイドを入れてないので文章だけで読ませようとしているが、とんでもない。わりといいのは3章の『ジャズを「集める」』の項かな。いちおう日本のCD業界の話とか、あるしベスト盤やボーナストラックの批判とかは首肯されると思う。しかしこれだけで「超」がつくのはいいすぎだろう。日本のジャズ批評というのがお粗末なのは、いまだにこのあたりの話でとどまっているからだろう。
昔は油井正一とか児山紀芳のジャズの重鎮がいて、それに左派として相倉久人や平岡正明、中野博昭とかがいて右派としてイソノテルヲや岩浪洋三がいた、というような構図だった(ここで右・左というは保守か急進派かという意味だが、そう単純でもなくややこしいのだが…)。
もちろんいまも現役の人もいるし児山さんは健在みたいだが…。そもそもまだジャズがフリーからポストフリー、フュージョンなどが出てくるという変転の時代を続けており、終わった音楽とはみなされていなかった。つまり時代と寄り添っていたのである。いまではロックなども終わった音楽ってみなされているので、ちょっと隔性の感がある。
昔はよかった、と言ってしまうとつまらない結論になるので、それはやめておくが、すくなくとも新書でいろいろ書くのならば過去の遺産や蓄積を活かして、そのうえで新しい視点を打ち出してほしいものだ。