『ワールドミステリーツアー13 空想編』(同朋社 2000年)は水木しげるの楽園探しの原稿やパリ奇想建築のはなし、ヨーロッパの死後の世界などおもしろい項目がならぶが、「ミニアチュール幻想界へ入る」(
東雅夫)というのがホンノンボの世界を端的にあらわしたものだと思った。
このエッセイには常世の国という水木しげるの絵が挿絵として挿入されているが、それがまさしくホンノンボのイメージである(もちろん水木しげるのエッセイもそんな絵がいくつかある)。
そこでは
佐藤さとるというファンタジー童話作家が紹介されているのだが、そのなかで「新仮名草紙―卓上庵志異」という小説について、ちいさな石が岩山のように見立てる話であるが、それが部屋に飾って反応をみるとぼうっと煙っている、それを見た翌日は雨の日であるという風変わりな話なのだ。
河原で拾いあげた石を机上に据え、そこに山水画の世界に通ずる大自然の景観を幻視するという境地は、文学のみにとどまらず、すでに近世において、ひとつのアートの域にまで高められていたとおぼしい。
と書いて
村田憲司『盆栽鉢と水石』という本を紹介している。そのなかに石を水盤にいれて眺めてみれば、自然の風景が浮かびあがる、という一節があるが、これはまさに
ホンノンボとまったくおなじなのである。