『写真で歩く 世界の町並み』(高志宗明:写真・文 彩流社 2004年)は文字どおり世界の町並みの写真を掲載しているので「庇のある歩道」などをチェックするのに最適だ。
屋根付あるいは庇つきというのは、若干ニュアンスがちがっている。庇というのは、ちょっとした日除け的なものでひとりが雨宿りできるかどうかのスペースを庇としている例が多い。
いっぽう屋根付というのはきちんとした歩道のうえに屋根や建物を建て増ししているもので、雨をしのいで歩くことが可能だ。
ロシアのグルジア地方や東欧、ヨーロッパの北部などの街で庇ていどのスペースで建物を構成しているものがいくつか見られる。
やはり南欧にはしっかりした屋根のある歩道を設定しているものがある。マドリッド北東にある
シグエンサという街にアーケードのついた市庁舎の写真がある。
この本にはそのほか
スペインの
グアダルーペ、
サンティリャーナ・デル・マル、
ルーゴ、
サンティアゴ・デ・コンポステーラなど柱廊風のもの(2階が歩道へ向けてはみ出しているもの)から、完全なアーケードスタイルのものまである。
スイスの
ベルンには1キロにわたりアーケードの続くクラム通りというストリートが、見所だという。
キューバの
ハバナは柱廊やアーケードのつづく町並みが残っているようだ。
日本では青森県
黒石市には「
こみせ」(建物の軒から庇をだして、その下を通路としたもの)があり、観光名所になっているという。
かつて「こみせ」は新潟、青森、岩手、秋田地方に多くみられたが、しだいに減少して、今はほとんど姿を消したという。残念。
もうひとつ『
マレー半島 美しきプラナカンの世界』(産業編集センター 2007年)という本にシンガポールのショップについて書かれている。これはマレーシア・マラッカ、ペナン、シンガポール地域のコロニアル文化の紹介で類書のない本だ。シンガポールのラッフルズ卿により店の前を「ファイブ・フットウェイ」とする条例がだされたという。それは、店の建物の玄関前を柱廊形式にして通路とするもので台湾の町並みでも似たようなものが採用されている。それが「ファイブ・フットウェイ」という構造というらしい(通路幅を最低5フィートもたせることから、その名前がきている)。
日差しの強い南国ならではだが、シンガポールのほうが歩きやすいかもしれない。