昨年暮れに中国を旅行したが、7泊8日のツアーでほぼ毎日ホテルが代わっていった。同じホテルに泊まったのは最終日二日間だけだったが、だいたい同等の三つ星クラスのホテルだった。そこで確認したのだが、部屋には必ずスリッパが置いてあった。
もちろん使い捨ての薄いもので、後あとまで使用にたえるものではない。同宿の友人が朝食をとりに別の階の食堂に出るときスリッパでいったが、どことなく足元が頼りなげなカンジなのだ。たしかに薄いスリッパでペタペタと歩いていると不安な気持ちになってくる。以前泊まった中国のやや高級なホテルのスリッパは立派なもので、日本に持ち帰り自宅で日常的に使用している。
中国では日本と違い、洋風の生活様式(畳暮らしではない)なので、ホテルにスリッパが置いてあるのは日本のホテルの影響ではないだろうか。
椎名誠がスリッパについてなかなか面白く考察している。
大日本スリッパ問題 「図書 2006年5月号」(岩波書店)
これによるとスリッパの起源は外国らしいが、日本独自の発展があり、とくに洋式住宅のブームによりスリッパがフローリングの台所や居間、客用、トイレなど用途別に細かく分けられてきて、今では世界でも稀なスリッパ文化の国になったという。
しかし内実はお寒い限りで、日本の温泉旅館や病院の入り口には、消毒のされていないスリッパが山積みされて、「衛生のため」「足を汚さないため」のものが、結果的には「非衛生的」なものになっている、という。
スリッパに履き替えるような会社には投資をしても儲からない、という話なども書かれており、笑わせてくれる。
たしか本多勝一もスリッパの非衛生的な存在について書かれていたような気がする。公共施設などでもスリッパに履き替えて上がるところがあるが、しまうときに左右のスリッパを上下に重ねてはめてセットすることが多いように思う。これも下についていたごみを結果的になかに入れているわけで、そのようなスタイルを平気でつづけている、というのも冷静に考えると不思議である。
あるブログでは、ひとの家にあがるとき客用スリッパがったりするが、それを履くべきかどうか悩むというのがある。
確かに、玄関に揃えておいてあったりするが、客間にいくときれいなカーペットが敷いてあったりして、そこでスリッパを履いたままだと違和感があるのだ。畳のような和室であれば境界が明確なので、さすがに畳のうえにスリッパのまま足を入れることはないが、フローリングでじゅーたんが敷いてあったりする場合は困惑する。
この場合はじゅーたんの状態をチェックして素足でよさそうであれば、じゅうたんの外にスリッパを脱ぐことになるのだろう。
しかし、そのような家に限って家人たちは素足で歩きまわったりしていて、スリッパを使用するのは客人のみということになっていたりするのだが。