不動産不況が叫ばれていて、大手のディベロッパーが民事再生法の申請をしたりしている。それでも大都市、とくに東京は再開発の波音が鳴り止む気配がない。
資本を有効活用する、あるいは金あまりの現象に対応するためおおきなプロジェクトが進行する。
いっぽう再開発の影響がマイナスになるばあいもある。ふるい商店など地元で密着して商売をしているところにとっては基盤が崩されることで仕事がつづけられなくなっている。
このような状況をまっとうに批判しているのが中崎隆司の『
なぜ無責任な建築と都市をつくる社会が続くのか』(彰国社 2007年)である。
六本木ヒルズのような建物は高額商品ゆえそこに住むことがステータスとなるが、それはあくまで一部の人間だけ(ホリエモンにみられる拝金的思考)、であり一般の人間には共感できない。それゆえ共感をつくるためにマスメディアを活用して広告宣伝にたよることになる。そして経済優先の考えかたをぼかすために文化施設をつくることになる。
また<「ゲイジュツ」ではまちづくりはできない>ということで現代建築は現代美術を必要としないという状況にあり、バブル崩壊後は景気後退のなか街の活性化や地方再生の方法として「ゲイジュツ」が活用できないか、という企画が生まれてくる(ヨーロッパの都市などでの事例を参照して)。
ここでも著者は安易な方策を批判する。『結論から言うとあまり期待しないほうがいい。「ゲイジュツ」には人を引きつけ、人と人をつなぎ、新しい視点を示すという力はある。ただ「ゲイジュツ」が生活に必要であるという考え方が浸透していない人たちが暮らす地域で事業を行っても、地方公共団体が予算をつけて行っている期間だけの活性化に終わってしまう可能性が高い』
『「デザイン」の活用に一歩踏み出すことを促すような支援を考えたほうがいい、「デザイン」と比べて「ゲイジュツ」は一般の人からいまだ遠いものであり、受け入れる素地ができていない。押しつけられた美術作品というのは迷惑なものだ』と正しく見ている。
じっさい成功したり、求められたりするものは大衆的なものなのである。その意味で近年美術館で「手塚治虫展」や「赤塚不二夫展」、「スタジオ・ジブリ展」がひらかれて隆盛するのも、そのような観点からだと思われる(ことの是非はともかく、経済的成功をもとめてのことだろう)。
たとえばグーグルで検索してもアートの項目でみると「地域おこしがらみ」が多い。
・佐世保発!:風車でアート―五島列島の宇久島(佐世保市)に8月下旬、初めて渡った。目的は「地域から芸術の発信を」とうたう「アートポートSASEBO」の…。
・魅惑のアートで母校PR OB会が仙台でフェス
・団地にアート出現―国立の商店街、ホールに40点 30日まで
・稲アート:棚田に描いた親子パンダ 横瀬町に登場、10月下旬まで/埼玉
などなど…。
これらについて中身を仔細に検討することはできないが、成功しているのは大衆的なものが多いと思う。
「都市に祝祭はいらない」と喝破したのは平田オリザだったか、都市には日常的にハレの場がたくさんあり、なにかやっても埋没してしまう。その意味では田舎にこそ「ゲイジュツやアート(的なもの)」が必要なのかもしれない。
その場合は米子・境港の「水木しげるロード」のようにアートなんぞと小ざかしいことは言わず妖怪キャラを楽しむことを押し出すのが正解なのだ。
http://furusato.sanin.jp/p/area/sakaiminato/1/
また、コスプレを街中でおこなったりするイベントもおもしろいかもしれない。その意味でこれもアリである。
<コミケ>2010年開催「スペシャル」の開催地を公募へ テーマは「まちおこし」
9月15日13時13分配信 毎日新聞
日本最大のマンガ同人誌即売会「コミックマーケット」を主催するコミックマーケット準備会は15日、2010年3月21日に開催予定の特別イベント「コミケットスペシャル」の開催地を公募すると発表した。「コミケでまちおこし」をテーマに、同人誌即売会で町おこしをしたい自治体や各地の観光協会などに呼びかける。
http://furusato.sanin.jp/p/area/sakaiminato/1/
http://mainichi.jp/enta/mantan/manga/news/20080915mog00m200003000c.html
http://www.comiket.co.jp/info-c/CS5/