『フランスの庭
奇想のパラダイス』(横田克己 松永学他写真 新潮社 2009年)を読む。
フランス式庭園は基本的にシンメトリーであり、平坦な幾何学的構成の庭だ。
この本はそのような標準的な庭ではなく、そのようなオーソドックスな庭から逸脱した庭園をあつかっている。
フランスでは昔ながらの街並みを保っている街や市街がおおく、パリもそうだが、街並みじたいが庭園のようにもみえるときがある。
パリから一時間くらい電車にのっていくとシャルトルというノートルダム大聖堂のある、ふるい街がある。駅から30分ほど歩くと「
ピカシェトの家」がある。
訪ねたときは冬で、11月から3月からはあいにく閉館となっていた。
シュヴァルの理想宮のように、この家もレイモン・イジドールという墓守が道端に落ちているガラスや陶器の破片を拾ったことから、その破片を収集して家と庭をつくりはじめた。
その家と庭はさほど規模はおおきくないが、陶器のモザイクで覆われていておとぎ話にでてくる魔法の家のようだ。
「
ラ・ファビュロズリー」は建築家アラン・ブルボネは庭に市井のアーティストたちの作品を飾る庭園をつくったが、ここはあくまでアーティストたちの素朴な作品がメインとなっている。
「
我らふたりの庭」はシャルル・ビリーが中世風の建物や中東のイスラム寺院風の建物をミニチュアとして庭につくりあがた。
「
ロベール・タタン美術館」はアール・ブリュットの芸術家がつくった美術館で、アフリカやオセアニアの民俗美術・造形の影響をうけたとおもわれる建物が印象的だ。
「ラ・カテドラル」は造形作家のジャン・リナールの創作拠点であり、キリスト教的な楽園の創造をめざしたものだ。深遠な森のなかに出現するカラフルな建造物はたしかに孤高の楽園として写る。
これ以外にもたくさんの庭園が紹介されているが、やはり上記のアート・ブリュット、アウトサイダー・アート系の庭園にインパクトがある。